沖合には寒流と暖流がぶつかる好漁場が広がり、山々から流れ出すミネラル豊富な清流が魚介類を育む、まさに天恵といえる自然環境が広がる重茂半島では、合成洗剤の使用を禁止しています。
きっかけは1976昭和51(1976)年、海の天然資源がかげりをみせはじめていた頃のこと。漁協婦人部のメンバーたちは生活クラブと交流する中で、自分たちが毎日使っている合成洗剤が海を汚し、生態系に悪影響を与えていることに気づきました。そこで昭和51(1976)年から合成洗剤の追放運動(「売らない・買わない・使わない」の3ない運動)をスタート、昭和55(1980)年には重茂漁協通常総会において合成洗剤を使わないことを決議した上で、合成洗剤不使用を呼びかける看板を地域内に設置しました。
それだけではありません。女性部のメンバーは重茂にある商店に置かれていた合成洗剤を全て買い取り、かわりに石けんを販売するようにお願いをして回りました。さらに各家庭の台所へ入って、石けんの使用を確認したこともあったのです。この徹底した取り組みにより、重茂の石けん使用率は今も高い割合を継続しています。
平成22(2010)年5月29日と30日の2日間にわたり、重茂半島で「協同組合石けん運動連絡会(協石連)」が主催する「2010シャボン玉フォーラムin重茂」が開催されました。フォーラムは石けんを使う暮らしを通じて足元から環境問題を考えることを目的に毎年開かれており、この年は生活クラブが共同購入で提携している重茂漁業協同組合と生活クラブ岩手が受け入れ団体となって行われました。フォーラムは20年以上前から開催されてきましたが、漁業生産地での開催は初めてのことでした。
フォーラムは伊藤隆一組合長の挨拶で幕を開け、全体会では女性部長の盛合敏子さんが「海・燦々と 私たちの合成洗剤追放運動」をテーマに重茂での取り組みを説明しました。2日目は「六ヶ所核燃料再処理工場反対の取り組みについて」「もう一度見直そう石けん運動の原点」「重茂の豊かな海と昆布の収穫から加工までの体験」「十二神山千古の森の環境整備と源流散策」の4つの分科会に分かれて行われ、終了後は大漁旗がはためく下で参加者が1500 本もの苗木を植えた「フォーラムの森」づくり事業記念植樹祭が行われました。
岩手県知事の認定を受けた「重茂漁業協同組合未来につなぐ美しい海計画」に平成18年から取り組み漁業活動で発生する様々な課題に、漁業者のみならず女性や子どもたちも参加して、自然環境を守る活動を行っています。
- 平成18年に認定された岩手県知事の認証書
海が生活の糧である重茂では、この自然環境を守り、きれいにするのは当然のことであり、生活サイクルとなっています。住民が集まって作業することで地域の輪が生まれ、子どもたちの心にも助け合いの精神が自然と備わっていきます。
- 清掃活動
森が育んだミネラル分の豊富な水こそが、海産物にとっての大切な栄養源です。過剰な森林伐採は海の環境を激変させてしまうといった問題を引き起こします。そういった海と森のつながりを伝えるために地域住民や小学生による広葉樹の植樹を実施しています。また、重茂半島では国有林の伐採をしないように、国への要望も続けてきました。
- 植林活動
地産地消は地域の生産者と消費者が結びつくことで地域の農林漁業と関連する事業の振興、食育の推進、都市部と農山漁村との絆が生まれます。環境負荷の低減、重茂漁協では、生活クラブと連携した合成洗剤追放運動、地元海産物を使った復興商品の企画販売と学校給食への食材提供、漁業体験などが評価され全国地産地消推進協議会の主催する優良活動表彰において、令和2年度「全国地産地消推進協議会会長賞」を受賞しました。
- 全国地産地消推進協議会からの賞状